「水槽とクレマチス」とは?
【活動コンセプト】
現代の東京で活動するアイドルの多くが、「ライブアイドル」として活動しています。しかし時にそれは「ライブハウスに来られる人」の小さな文化圏に閉じてしまうことで、また頻繁な(かつ毎回似たような)ライブ活動を繰り返すことで、アイドル・ファン双方の心身の疲弊を生んでしまうことがありました。そこで生まれたのが、新しいアイドルプロジェクト「水槽とクレマチス」です。
「水槽とクレマチス」は、ライブ以外の活動・表現を「当たり前のもの」とし、並行して人間的な、もしくはゆとりのある生活を大切にすることを目指します。そこでは、ステージ以外にも存在する「生活」を含めたアイドルの生き方自体が肯定され、頑張って生きていること自体が表現化されます。ステージに立てない(立たない)ことも否定されないような、真に多様な生き方、振る舞いを伝えていきたいと考えています。
一方で、「生活」とも「ライブ」とも異なるコンテンツを、新たな「当たり前のコンテンツ」として提示したい。それが旅です。旅の非日常を配信コンテンツとして定期的に届け、知っている町の新しい側面を伝え、知らない町への新しい興味を刺激していきます。アイドル自身にとっても新しい楽しさが定期的にあること。それが疲弊せず楽しく続けられるために重要だと考えています。
なお急いで付け加えると、「現場でのイベント・ライブ」は活動の中核としてちゃんと存在します。上記はあくまで「これまでのライブアイドル活動」との差異を強調したもので、新プロジェクトが「現場」での活動をおざなりにするわけではありません。「生活(life)」「ライブ(live)」「旅(journey)」。この3つが組み合わさり、相互に否定せず日常と非日常を、重なり合いながら部屋と現場と配信を行き来する。それが「水槽とクレマチス」プロジェクトです。
【「⽔槽」について】
部屋=日常に繋がる言葉として、「水槽」を採用しました。人によってはおしゃれなアクアリウムであり、人によっては金魚鉢や、幼い頃に飼ったメダカの水槽を連想するかもしれません。水槽は生活スタイルに結びついていると同時に、部屋の中に置かれた、「別の生き物が生活しているもう一つの部屋である」という二重性を持っています。部屋の中の部屋。生き物が飼う生き物。「生活」のコンテンツは、部屋の中での生き方(衣食住)であると同時に、それが配信コンテンツとして観賞されるという二重性を持っており、「水槽」のイメージに重なります。アイドルの生活がただ消費されるのではなく、(例えばそれを真似たりすることで)眺める人の生活自体を楽しく変えていくようなものになれば良いと思います。
【「クレマチス」について】
クレマチスの花言葉は「旅の楽しさ」「精神の高貴さ」「策略」。精神の高貴さは「生活」のゆとりに、「策略」はアイドルの持つ複雑性に繋がっていますが、ここではやはり「旅の楽しさ」のイメージでプロジェクト名に採用しました。見知らぬ場所に出向き、何かに出会って、その感情の動き自体を届け、そのあとちゃんとお家に帰る旅。そして水槽の中の動物との対比でもあるのですが、植物もまた本プロジェクトの隠れテーマです。能動的ではないが生きるだけで人を感動させる美しさを持っていること。またアイドルは可憐さ、はかなさ、「旬」の短さから時に花に比喩されますが、実は植物は適切に管理すれば極めて寿命が⻑いのです。新しいアイドルのイメージ像として、植物は良いインスピレーション源になってくれるのではと考えました。
【プロジェクトへの思い】
ライブに通うファンだけでなく、ライブに来られない人にも元気を与え、遠くの人に新しい世界への好奇心や元気を届けること。眺められる水槽となり、旅するクレマチスとなること。けれどその前提は、アイドル自身や関わる人たちが持続可能な形で活動を続けていけることであり、水槽にもクレマチスにもケアが必要です。そしてケア自体がきっと、人間の本来的な楽しさに繋がっています。「現場」はもちろん楽しい。でも「現場」に行かなくても、娯楽的な消費とケアと模倣の重なり合う中であなたの生活が変わっていき、生きることが楽しくなる。動きだした足はどこへ向かうのでしょうか。